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福岡家庭裁判所 昭和41年(家)596号 審判 1966年7月29日

申立人 上野和男(仮名)

相手方 佐藤節子(仮名)

未成年者 上野一郎(仮名)

主文

未成年者上野一郎に対する親権者を相手方から申立人に変更する。

理由

申立人は主文と同旨の審判を求め、その申立理由として「申立人と相手方は昭和三六年六月二〇日協議離婚をし、その際未成年者一郎に対する親権者を相手方と定めた。しかしながら事実上は申立人において未成年者を引取り、今日まで養育して来ているので親権者を申立人に変更するのが相当であると思われるので本件申立に及ぶ」と述べた。よつて右申立の当否について判断する。

申立人、相手方の各戸籍謄本、申立人、相手方各審問の結果、調査官作成の調査報告書によると、申立人と相手方は昭和三六年五月二〇日協議離婚したが、その際両者間の唯一の子である未成年者については親権者を母である相手方とする旨届出たこと、然しながら当時未成年者は一歳で相手方は外で(バー)で働いていたことなどから、申立人側で一応右未成年者を育てることに話がまとまり、爾後今日まで申立人の父母(七〇歳、六四歳)において育てて来ていること、右父母は玄海町の環境良好な自宅で申立人を含めた子等の送金によつて比較的楽な生活をしており、未成年者は心身の発育も良好で現在通園しており、祖父母との間は相互に愛着度が強く離れ難いものになつて来ていること、申立人は現在タクシーの運転手として働き、一年前に再婚(内縁)したが、内妻も働き右夫婦とも祖父母のもとで未成年者の養育が困難になつた場合には未成年者を引取る意思はあること、他方相手方は現在バーを経営し経済的にも安定し、相手方の先々夫との間の娘(一四歳、一七歳)と暮しているが家族全部未成年者を引取つて一緒に暮すことを切望していること、以上の事実が認められ、上記認定を左右するに足る証拠はない。

以上の事実によると、当事者双方経済的に安定していることが認められ、又相手方において親としての愛情の下に、未成年者を生さぬ間の子としての扱いを受けることをおもんばかり引取ることを希望しているものであることは十分に察せられるところであるが、上記認定の未成年者の生活状況殊に未成年者が祖父母の許で祖父母をいわば親代りとして慕い順調に育つていること、更に来春は学齡に達することを考慮すると、現段階のもとにおいては親権者をこの際申立人に変更することが未成年者の福祉のために相当であると考える。

よつて、家事審判規則第七二条第一項を適用して、主文のとおり審判する。

(家事審判官 丹宗朝子)

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